内房線長期運休に対する京葉臨海鉄道を活用した代替輸送の提案
――既存貨物鉄道の災害時旅客輸送への一時活用
1. 提案の概要
2026年9月の大雨により、JR内房線では姉ケ崎駅~木更津駅間に大きな被害が発生し、復旧には少なくとも3か月程度を要する見込みとなっている。
内房線は千葉市から市原市、袖ケ浦市、木更津市方面を結ぶ主要な交通手段であり、この区間の長期運休による影響は大きい。JR東日本によれば、ピーク1時間の利用者はおおむね8,000人に達し、これを定員50人のバスだけで輸送する場合には約160台分の輸送力が必要になる。一方、現時点で確保できている代行バスは1時間あたり1~2台程度にとどまっており、通常の代行バスという方法だけでは鉄道の輸送力を十分に代替できない状況にある。
JR東日本は、被害が比較的少ない長浦駅~木更津駅間について、上り線を利用した暫定的な単線運転を検討している。これが実現すれば、バスで代替する区間を姉ケ崎駅~長浦駅まで短縮できるため、現在より大幅な改善が期待できる。しかし、それでも朝夕を中心とした大量の旅客を姉ケ崎駅~長浦駅間で輸送する必要があり、バスの確保が輸送力を制約する問題は残る。
そこで本提案では、内房線の復旧までの緊急措置として、蘇我駅から袖ケ浦市の京葉久保田駅までを結ぶ貨物鉄道、京葉臨海鉄道を一時的に旅客輸送にも利用することを提案する。
想定する経路は、蘇我駅から京葉臨海鉄道で京葉久保田駅まで旅客を輸送し、そこから短距離のシャトルバスで長浦駅へ接続するものである。長浦駅~木更津駅間でJR東日本が検討している暫定単線運転と組み合わせれば、蘇我駅から木更津方面へ向かう第二の輸送経路を構成できる。
本提案の目的は、京葉臨海鉄道によって内房線の全輸送量を代替することではない。限られた代行バスに集中する需要の一部を既存の鉄道へ移し、鉄道、バス、被災していない内房線を組み合わせることで、地域全体として確保できる輸送力を増やすことにある。
2. 背景――8,000人をバスだけで輸送することの難しさ
鉄道が長期間運休した場合、一般的にはバスによる代行輸送が行われる。
しかし、今回の内房線では、その方法だけで必要な輸送力を確保することが難しい。
JR東日本千葉事業本部は、今回の運休区間について、ピーク1時間のおおむね8,000人をバスで輸送するには、定員50人として約160台分の輸送が必要になるとの試算を示している。実際にはバスが一度旅客を運べば終わりではなく、折り返して再び輸送する必要があるため、運行距離が長くなるほど必要な車両数と運転士数も増加する。
さらに問題となるのが、短期間で大量のバスを確保すること自体の難しさである。
JR東日本は関係機関との調整を行っているものの、9月28日から予定されている代行輸送について、現時点で確保できているのは1時間あたり1~2台程度としている。車両だけでなく運転士にも限りがある以上、費用を投入すれば直ちに必要な輸送力を確保できる問題ではない。
このため、今回の代替輸送では、バスの台数を増やすことと同時に、一台のバスが担当する距離を短くし、限られた車両を何度も利用できる輸送構造をつくることが重要になる。
JR東日本が検討している長浦駅~木更津駅間の暫定単線運転は、まさにこの考え方に沿ったものである。鉄道が利用可能な区間を可能な限り鉄道に戻し、バスが担当する区間を姉ケ崎駅~長浦駅に短縮することで、同じバス台数でもより多くの旅客を輸送できるようになる。
本提案は、この考え方をさらに一歩進めるものである。
3. 京葉臨海鉄道を利用した第二の輸送経路
京葉臨海鉄道は、蘇我駅を起点として京葉工業地域を南下し、袖ケ浦市の京葉久保田駅までを結ぶ貨物鉄道である。
通常は工業地帯の貨物輸送を担っているが、内房線とは別の経路によって蘇我から市原・袖ケ浦方面まで到達している。また、蘇我駅ではJR線と物理的に接続しており、現在もJR貨物との間で貨物列車の受け渡しが行われている。
今回の内房線不通を考える上で重要なのは、被災した内房線とは別に、蘇我から袖ケ浦方面まで到達する鉄道インフラが既に存在していることである。
そこで、蘇我駅から京葉臨海鉄道を経由して京葉久保田駅まで旅客列車を運転し、そこから長浦駅までを短距離のシャトルバスで接続する。
長浦駅~木更津駅間の暫定単線運転が実現すれば、
蘇我駅 → 京葉臨海鉄道 → 京葉久保田駅 → シャトルバス → 長浦駅 → 内房線 → 木更津駅
という経路を構成できる。
これにより、姉ケ崎駅~長浦駅間の代行バスへ集中する旅客の一部を、蘇我駅から別経路へ分散できる。
京葉久保田駅から長浦駅までは比較的近いため、接続バスは短距離の往復に専念できる。列車の到着に合わせて複数台をまとめて運行し、長浦駅で旅客を降ろした後すぐに京葉久保田駅へ戻すことで、少ない車両を繰り返し利用することができる。
大量輸送に適した鉄道で可能な限り長い距離を運び、バスは鉄道同士を接続する短距離輸送に集中させる。この役割分担によって、現在不足しているバスと運転士をより効率的に利用することができる。
4. 久留里線キハE130系の活用
京葉臨海鉄道は非電化路線であるため、内房線で通常使用されている電車をそのまま走らせることはできない。
一方、木更津駅を起点とする久留里線では、ディーゼルエンジンによって走行するキハE130系気動車が使用されている。久留里線も今回の災害によって運転を見合わせていることから、運用可能な車両を確保できるのであれば、臨時輸送用車両として活用できる可能性がある。
京葉臨海鉄道と久留里線はいずれも軌間1,067mmの非電化鉄道であるため、基本的な走行条件には共通点がある。また、JR東日本の気動車による検測車両が京葉臨海鉄道へ入線している実績もあり、JRの気動車が物理的に一切入線できない路線というわけではない。
ただし、これだけをもってキハE130系による営業運転が可能と判断することはできない。
車両限界、軸重、曲線や分岐器の通過条件、信号保安装置、踏切制御、列車無線等について、車両と線路の双方から技術的な確認が必要になる。また、久留里線の車両が木更津側に留置されている場合には、内房線の被災区間を越えて蘇我側へどのように移動させるかという問題もある。
したがって、キハE130系については使用を前提とするのではなく、既に近隣に存在する車両として、最初に適合性を確認すべき候補とすることが適切である。
5. 仮設設備を京葉久保田駅に集中する
数か月間の緊急輸送を目的とする以上、通常の旅客鉄道と同等の設備を全線に整備することは合理的ではない。
そこで本提案では、途中の貨物駅では旅客を乗降させず、蘇我駅~京葉久保田駅を原則として直行運転する。
千葉貨物、浜五井、前川、北袖等に旅客駅を設ければ、それぞれにホーム、照明、柵、道路への安全な動線等が必要となり、工期と費用が増加する。今回必要なのは沿線全体に新しい旅客鉄道を整備することではなく、内房線復旧までの間に一定の輸送力を確保することである。
蘇我駅ではJR線と京葉臨海鉄道が既に接続しているため、既存のJR旅客ホームから臨海本線方面へ列車を運転できれば、新たな乗降設備を設ける必要がない。
この運転が現在の信号設備や構内配線で可能かについては詳細な確認が必要であるが、実現できれば、新たに整備する主要な旅客設備を京葉久保田駅側に集中できる。
京葉久保田駅についても恒久的な駅を建設する必要はなく、数両編成に対応した仮設ホーム、安全な旅客動線、照明、柵等を整備し、係員を配置する方法が考えられる。運賃収受についても、通常の自動改札設備を新設するのではなく、既存のJR乗車券との一体的な扱いや臨時改札等によって設備を簡素化する余地がある。
こうした方法によって、工事対象を最小限に抑えながら早期の運行開始を目指す。
6. 貨物輸送との両立
京葉臨海鉄道は、京葉工業地域の物流を支える現役の貨物鉄道である。
旅客輸送を実施する場合でも、既存の貨物輸送への影響は可能な限り小さくする必要がある。
そのためには、貨物列車を停止して旅客列車へ置き換えるのではなく、既存ダイヤの空き時間を利用するとともに、必要に応じて朝夕の貨物列車を旅客需要の少ない時間帯へ移動する方法を検討する。
京葉臨海鉄道は単線であるものの、途中には列車交換が可能な設備が存在し、実際に複数の貨物列車を処理している。したがって、単線であることだけを理由として旅客列車の追加が不可能になるわけではない。
一方で、公開されている貨物列車の時刻だけから、何本の旅客列車を追加できるかを正確に判断することもできない。貨物駅での入換作業、交換設備の有効長、閉塞方式、荷役時刻、荷主との契約等も運行計画を左右するためである。
まずは既存の貨物輸送を維持したまま運転できる本数を検討し、それだけでは十分な輸送力を確保できない場合には、朝夕の一定時間に限って貨物列車の時刻を変更することが考えられる。
内房線の復旧まで数か月という期間であれば、貨物輸送を恒久的に変更する必要はない。旅客需要の集中する時間帯と貨物輸送を時間的に分離することで、双方の輸送機能を可能な限り維持することが重要である。
7. 期待できる輸送効果
京葉臨海鉄道による臨時旅客輸送だけで、ピーク時約8,000人という内房線の需要をすべて処理することは難しい。
しかし、今回必要なのは一つの交通手段だけで全需要を処理することではない。
例えば、仮に一列車で数百人を輸送し、1時間に複数本を運転できれば、その人数については姉ケ崎駅~長浦駅間の代行バスを利用する必要がなくなる。50人程度を輸送するバスと比較すれば、一列車によって複数台から十数台分のバス輸送を置き換えることができる。
さらに重要なのは、京葉久保田駅から長浦駅までの接続バスを短距離で繰り返し運行できることである。同じ台数のバスでも、長距離の代行輸送に使用する場合より多くの旅客を輸送できる。
したがって本提案の効果は、京葉臨海鉄道そのものの輸送人数だけで評価すべきではない。
内房線の暫定運転、姉ケ崎駅~長浦駅間の代行バス、京葉臨海鉄道、京葉久保田駅~長浦駅間のシャトルバスを組み合わせることで、一つの経路に集中している需要を複数の経路へ分散し、限られた車両と運転士から得られる輸送力を最大化することに意味がある。
8. 実現に向けて確認すべき事項
本提案を実施できるかどうかについては、公開情報だけでは判断できない技術的な事項が残されている。
しかし、最初の段階で確認すべき事項は比較的明確である。
まず、キハE130系等の利用可能な気動車について、京葉臨海鉄道の車両限界、軸重、曲線、分岐器、信号保安設備等との適合性を確認する必要がある。
次に、蘇我駅の既存旅客ホームから京葉臨海鉄道方面へ旅客列車を運転できるか、信号連動装置や構内配線を含めて確認する。
京葉久保田駅では、数両編成の列車を停車させる仮設ホームの設置場所、安全な旅客動線、バスの乗降・待機場所を現地で調査する必要がある。
これらと並行して、京葉臨海鉄道の実際の運行データを用いて、貨物列車を維持した場合と、朝夕の貨物列車の時刻を調整した場合について、それぞれ設定可能な旅客列車本数を検討する。
制度面では、国土交通省、JR東日本、京葉臨海鉄道、JR貨物、千葉県、関係自治体による協議が必要となる。安全上必要な検査や試運転を省略することはできないが、数か月間の災害時輸送であることを踏まえ、行政手続きや事業者間調整については可能な限り並行して進めるべきである。
これらの確認を順番に行うのではなく、車両、線路、信号、仮設設備、貨物ダイヤ、制度手続きを同時に調査し、短期間で実施可否を判断する体制を構築することが重要となる。
9. 災害時に既存インフラを組み替える
今回のような長期運休では、失われた鉄道をそのまま別の交通手段に置き換えることだけを考えると、必要な車両や人員を確保できない場合がある。
一方、地域全体を見れば、被災していない鉄道、貨物鉄道、道路、バス等の交通資源が残されている。
平時にはそれぞれ異なる目的で使用されているこれらのインフラを、災害時に一時的に組み替えて利用できれば、新たなインフラを建設することなく輸送能力を補うことができる。
今回、京葉臨海鉄道の利用について実際に検討することには、内房線の代替輸送だけでなく、今後の鉄道防災という意味もある。
日本各地には貨物線、臨海鉄道、専用線等が存在している。主要な旅客路線が長期間不通となった場合に備え、どの路線にどの旅客車両が入線できるのか、どこに緊急乗降設備を設置できるのかをあらかじめ把握しておけば、災害時の選択肢を増やすことができる。
道路について緊急輸送道路をあらかじめ指定しているように、鉄道についても、平時の用途を越えて既存ネットワークを災害時に利用するための準備を進める余地がある。
10. 提案
内房線姉ケ崎駅~木更津駅間の長期運休に対し、JR東日本が進めている代行バスの確保と長浦駅~木更津駅間の暫定単線運転に加えて、京葉臨海鉄道を利用した臨時旅客輸送について、直ちに技術的な検討を開始することを提案する。
具体的には、蘇我駅から京葉臨海鉄道を経由して京葉久保田駅まで旅客を輸送し、短距離のシャトルバスによって長浦駅へ接続する。長浦駅から先は内房線の暫定運転を利用することで、姉ケ崎駅~長浦駅間の代行バスとは別の第二経路を形成する。
実施に当たっては、久留里線で使用されているキハE130系等の気動車を候補として入線可能性を確認し、蘇我駅の既存旅客設備を可能な限り利用する。京葉久保田駅には必要最小限の仮設乗降設備を設け、途中の貨物駅では旅客扱いを行わないことで、工事範囲と準備期間を抑える。
もちろん、技術的な調査の結果、信号設備、車両適合性、貨物輸送との調整等の理由から短期間での実施が困難と判断される可能性はある。
しかし、ピーク1時間で約8,000人を輸送していた鉄道路線が長期間失われる一方、代行輸送に必要なバスを十分に確保できていないのであれば、地域に既に存在する別の鉄道インフラを利用できる可能性について検討する価値は大きい。
本提案が目指すのは、京葉臨海鉄道を新たな旅客路線にすることではなく、内房線が復旧するまでの限られた期間に、地域に存在する交通資源を最大限活用することである。
内房線、京葉臨海鉄道、代行バスを個別の交通手段として考えるのではなく、一つの交通ネットワークとして組み替える。
内房線の長期運休に対する緊急輸送策として、その可能性を直ちに検討することを提案する。
Xで見かけた鉄道オタクの妄想をChatGPTと壁打ちしてみました。
